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コロナに感染して飲食店に行ったら損害賠償請求されるのか?

弁護士の本多芳樹です。

現在(2021年2月)再び緊急事態宣言が出て新型コロナウィルスが相変わらず猛威を振るっていますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか。前回の緊急事態宣言とは異なり、自身の業務への影響は多少限定的ですが、前回と同様に飲食店はほとんど20時以降営業しているところは少ないので、やはり生活面への影響は大きいですね。

さて、今回は、新型コロナウィルスに感染したお客が飲食をしたことにより、休業せざるを得なくなった飲食店側から当該客に損害賠償訴訟が提起されたというニュースを見たので、それについて考えてみたいと思います。

事実関係

報道によると、この客は、警察官であり、この警察官は昨年7月8日、派遣型性風俗店(デリヘル)を利用した。同12日夜から、のどの違和感や咳の症状が出ていたが、14日から十和田市に出張して、同僚とともに居酒屋とナイトクラブで会食した。

この時点ですでにデリヘル女性の新型コロナ感染が判明しており、男性は濃厚接触者だったが、青森市からの連絡に「心当たりはない」と話していた。15日夜、発熱や味覚異常があったため、救急搬送されて、この日のうちに陽性が判明した。

飲食店側は、警察官の感染によって、約2週間の休業を余儀なくされた。

不法行為が成立するか?

不法行為が成立するための要件

飲食店側は、不法行為に基づく損害賠償を請求する(民法709条)と考えられますが、不法行為が成立するための要件としては以下になります。

  • 原告の権利または法律上保護される利益の存在
  • 被告が違法に権利・利益を侵害したこと
  • 被告に故意または過失があったこと
  • 損害の発生
  • 因果関係があること

飲食店側の主張

飲食店側は以下のような主張をすることが想定されます。

  • 飲食店を営業して利益を上げる権利が存在する
  • 新型コロナウイルスに感染した客が違法に来店したことで休業せざるを得なくなり営業する利益を侵害した
  • 客は来店前に陽性者が出た風俗店を利用していたので、自らが濃厚接触者であることを知っていたといえ、過失がある
  • 飲食店は2週間程度の休業を余儀なくされたので、売上減少等の財産的損害が発生した
  • 因果関係がある

今回のケースで特に争点となるのは、3.客に過失があったといえるか、4.損害額がいくらになるのか、だと考えられます。

客に過失があったといえるか?

客が新型コロナウィルスに感染していることを知っていて飲食店を訪れた場合には、故意(わざと)が認定されると考えられます。一方、自分が新型コロナウィルスに感染していると知らなくて飲食店を訪れた場合はどうでしょうか?

過失とは、損害発生の予見可能性があるのに、損害発生を回避する作為義務(結果回避義務)を怠ったことをいいます。

そして、その判断は、職業・地位・階級などに属する一般人の注意能力を基準とします。

  • 客が風俗店を利用
  • 客と接触した女性の感染が確認
  • 客の体調に異変が生じる(のどの違和感やせきの症状等)
  • 保健所が客に対し、「濃厚接触者に該当するので、至急PCR検査を受けて」と連絡をする
  • それにもかかわらず、客が飲食店を利用した
  • その後、客の陽性が判明し、飲食店が休業せざるを得なくなった

というような場合について考えてみます。

この場合、現在の世の中の自粛の風潮や政府の新型コロナウィルスに関する発表・要請等を前提に一般人を基準にすると、不要不急の外出を控え、早急に医療機関で検査を受けるべきと判断するのが通常ということになると考えられます。

また、客が利用した飲食店が、居酒屋やスナックなど、ある程度の人数が集まり、食事だけでなく会話も楽しむような店であれば、より他者へコロナウィルスを感染させる危険性が増大すると想定されるでしょう。

以上からすると、一般人は、自らが濃厚接触者である場合、飲食店を利用すると結果的に飲食店が休業せざるを得なくなるので、利用を控え、早急に医療機関で検査を受けるべきと判断すると思います。それにもかかわらず、飲食店を利用した客には、過失が認められると考えられます。

逆に言えば、自らの感染や感染者との濃厚接触者であることにつき、全く知らなかった場合には過失が認められないと考えられます。

損害額はいくらになるか?

それでは、飲食店側の損害額はいくらとなるでしょうか?

一般的には、休業期間に得られたであろう利益(逸失利益)から、開店していた場合に発生する経費(人件費や光熱費等)を控除した残金を、財産的損害として請求することが考えられます。それに加え、風評被害は財産的損害に含まれるのかなども争点になることが考えられます。

さいごに

飲食店に客として訪れることで今回のようなリスクがあるなんてちょっと前までは考えられなかったですね。早期に新型コロナウィルスが収束することを心から願って今回は終わりにします。

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この記事を書いた人

株式会社三善屋

本多 芳樹(ほんだ よしき)

埼玉県出身。現在東京都在住。弁護士歴12年。
労働問題を専門とする弁護士事務所で長年勤務した後、2年前に独立。現在は労働問題を中心に民事事件全般を手掛けている。趣味は、フットサル。最近の趣味は、ゴルフのコースデビューを目指して、レッスンで練習中。


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