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ヒトノワの交流会

「人件費という経費を利益に変える」Office Follow代表 松岡勇人

こんにちは。ヒトノワ編集部の平澤です。

ヒトノワビジネスインタビュー第四弾。今回は社会保険労務士の松岡勇人さんに、「社会保険労務士とはどんな仕事なのか?」「どんな得意分野があるのか?」を伺ってみました。

人件費という経費を利益に変える

──事務所名と業種を教えてください。

社労士事務所Office Followです。業種は社会保険労務士事務所です。

一般的な社労士は、労務相談や就業規則の整備、労働社会保険関係の手続きなどを主たる業務としています。

もちろん、私も一般的な社労士業務もやっていますが、交流会等で一般的な社労士業務をアピールしても全く響かないんです。「ちょうど社労士を探していました!」っていう人くらいしかお客さんにならないんです。

今、士業の世界は激変しています。
AI(人工知能)の進歩に伴い、士業の仕事の多くがAIに奪われ、無くなると言われています。

これに伴い、社労士という士業も例外ではなく、激動の時代に入っています。今まで社労士がやってきたことをAIがやってくれちゃうんです。例えば、厚生労働省が就業規則を自動で作ってくれる「就業規則作成支援ツール」というシステムを組んでいるくらいですから(カスタマイズは必要ですが)。恐らく数年後には、一般的な社労士業務しかやっていない7割強の社労士は、AIに仕事を奪われ、失業状態になっちゃうと思いますよ。

だからこそ、他の社労士がやってないことをやろうと考えました。

私の所属している社労士グループでは、5年程前から「AIに仕事を奪われるではなく、AIと共存していくにはどうしたらいいか」をテーマにAIの専門家をお招きして研究をしております。

また、もっとエッジを効かせたくて「人件費という経費を利益に変える」というフレーズで営業活動もしています。

税理士や公認会計士は、「売上の視点から、人件費が高い低い…」は分析しコメントしますが、人件費の詳細についてまでは分析・コメントしていません。そこで、人件費という経費を社労士の視点で分析して、労使双方にメリットのある人件費削減案を提案し、営業利益が増えるコンサルをしています。

サラリーマン時代の苦労体験から社労士へ

松岡勇人

──なぜ社労士を目指したのですか?

大学を卒業した平成の初め頃、当時のテレビCMで流行っていたフレーズは、「24時間働けますか?」

大手小売業でサラリーマンとして働いていた新人の頃、上長からよく言われたのは、「まだ胃を痛めてないのか?まだ胃はあるのか?」「心臓、痛めたことないのか?仕事してないね」「これくらいの仕事で体を壊すくらいなら、いらないよ」という時代だったんです。今では、パワハラですね(汗)

当時、私の生活リズムは毎朝4時半に起きて5時5分の始発電車に飛び乗り、6時に会社の最寄駅に到着。駅前のコンビニでおむすび2つを食べて、6時半に勤務開始。23時半くらいに「終電無くなるから帰りますか!」という感じで帰路につき、なんだかんだやって寝るのが毎晩3時でした。4時半まで寝れるのですが、わざと4時に目覚ましをセット。4時にアラームが鳴ると、あと30分も寝れるという喜びを感じて二度寝するのが楽しみでしたね(笑)

こんな生活が当たり前の会社だったので、体を壊して辞めてく人も多く、体調が戻って復職した方々も差別用語にはなりますが、いわゆる「廃人」と呼ばれる状態になっていました。文字通り「身を粉にして働く」という過酷な労働環境下で働いていたのですが、「このままだと過労死で本当の粉(灰)になっちゃうな…」と、感じ始めたのが入社3年目の頃でした。

このような労働環境に違和感を抱きつつも、入社して数年が経過し、私もパート・アルバイトを管理する立場になっておりました。そんな頃、とあるパートさんが「有給休暇をください」と申請をしてきたんです。当時の私の知識では、有給休暇は会社の制度だと思っていたので、「うちの会社には、その制度(有給休暇)ないんだよね」とその場は収めたのですが、後日このパートさんが経済雑誌を持ってきたんです。その号のテーマが「有給休暇特集」でした。この記事を読んで、有給休暇制度が法律で定められていることを初めて知りました。最終的にこのパートさんが有給休暇を取れたかどうかは、その対応を上長に任せてしまったので今となってはわかりません。ですが、この件を通じて、「このような法律の知識も、パート・アルバイトを管理する役職には必要なんだな…」と認識しました。

この経験から「3時間でわかる労働基準法」等の書籍を読むようになりました。
当時、勤務していたのは大企業の子会社だったので、親会社と同様の制度や教育を受けておりました。ところが、労働関係の書籍を読み進めてみると、当時の知識でも「自分が勤めている会社は労働基準法に違反していることだらけだ…」ということが漠然とわかり、これは勉強しなきゃいけないなと思ったのが、始まりですね(笑)

ヒトの悩みを解決する

松岡勇人

──社労士をしていて、嬉しかったことは何ですか?

お客さんは困っていることがあるから相談に来るんですが、その困ってることを解決して「松岡さんに会えてよかった」と言われるのが一番嬉しいですね。

経営者の関心事は色々とありますが、ベスト3は決まっています。1つ目は「売上と利益」、2つ目は自社が黒字・赤字に関係なく「資金繰り」、そして3つ目が「人や組織」に関することです。

「人や組織」に関することは、関心事のベスト3であるにもかかわらず、他の関心事を優先する経営者が多いのも特徴で、先送りにしがちな傾向にある関心事です。

他の関心事を優先しても、「うちの社員はわかってくれるよね」で、「人や組織」は絶えず優先順位が落ちていってしまうんです。そして気が付いた頃には大変なことになっている…。

「人や組織」の悩みは、すごく面白いですよ。ヒト・モノ・カネ・情報という経営資源の中で、ヒトには「感情」がある。ヒトに関することは色々と研究されているけど、そこにその時々の各人の「感情」を加えて考えるから楽しいです。色々な会社の仕事していく過程でわかったことは、モノもカネも情報も結局はヒトが回していく、ヒトに関する諸々の問題が解決すれば、全てうまく回っていくのではないかと考えています。そして、「人や組織」に関することを経営者と一緒に解決できたときは嬉しいですね!

──逆に大変だったことはありますか?

たくさんありますよ(笑)

例えば、スポット業務をやり終え、請求する際、「そんな高いんですか」って言われることもよくあります。弁護士の法律相談のタイムチャージのように報酬については、私もあらかじめ言ってあるのですが、スポット業務は高いとよく言われます。

また、社労士の報酬が下がっている昨今では、価格競争に巻き込まれることもあります。
なので、エッジの効いた業務をすることで、砂漠で水を売るようなビジネスをしたいですね。

交流会等で名刺交換しただけの方に多いのが、何度も相談に対応したにもかかわらず、「これくらいの相談なら、無料でいいじゃないですか」と、なぜか友達感覚で請求に応じない方もいらっしゃいますね。

「専門家なのでチャンとしたことはやります。それに対して対価をチャンと払ってください」と、このような方々には声を大にして言いたいです!

──仕事で心がけている事はありますか?

月並みではありますが、「親切、丁寧、親身」になってやるということを大事にしています。
また、社労士の業務は、「労使双方の目線で取り組む」ことも心がけています。

中小企業だと社員数が限られているので、訪問した際によく会う人を通じて、その会社で働いている方たちの雰囲気を知り、人柄等がわかってきます。社長は経営者としての相談だけど、社員側はこう考えてるんじゃないかな、と思えてくるんです。

実は社労士としての新人の頃、社労士の身分を隠して週末に介護施設でバイトをした経験があります(介護福祉士の国家資格も取得しました)。ある時、施設長が労働トラブルで悩んでたので、「昔、人事部にいたことがあって…」というテイでアドバイスした経験があります。社労士としてだと経営者目線になりがちですが、一介護スタッフとして労働者目線でも労働トラブルを見ることができたこの時の経験が今、非常に役立っています。労使双方の目線で仕事ができるのも、私の強みだと思っています。

社労士としての信念を持つ

松岡勇人

──これから社労士を目指している人へのアドバイスがあれば教えてください。

士業を目指すのは、辞めた方がいいんじゃないかな?(笑)

何故かというと、昔は一流大学に進学して、弁護士を目指すのも良いと言われる時代がありました。なぜならば文系の資格試験で一番難しいと言われている司法試験をパスすれば、生活が保障されていたからです。今は時代が変わって、弁護士になったとしても食べていくことが大変になりました。社労士も同じです。

社労士試験の合格率は6~7%、毎年2,000~2,500人くらいが合格します。
同期合格25人程で勉強会を開催しておりましたが、16年経った現在、社労士として残っているのは私を含め数名です。多くの同期がせっかく独立開業したのに廃業してサラリーマンに戻ってます。

今、小学生の将来なりたい職業の上位には、「ユーチューバー」という新しい職業がランクインするようになりました。そしてトップ・ユーチューバーの方々は、稼いでいます。時代はドンドン変わっています。

単純に「社労士を目指してみるか」は、お薦めできないです。「資格を取得した後に何をやるか、やりたいか」を決めてからが良いと思いますよ。厳しい現実がある状況でも、信念があるならば社労士を目指すのも良い、と私は思います。

「牢働」ではなく「朗動」となる労働環境を目指して

松岡勇人

──最後に、これからの意気込みをお願いします。

サラリーマン時代の後輩が、退社時に「出所!」って、言ってたんです。
「これじゃあ『労働』じゃなくて、牢獄の『牢働』だな~」と、私は思ったんです。ほとんど強制労働させられてたようなものでしたからね。

私が経験したような労働環境、またそういった労働環境下の人を減らしたい!
『労働』が『牢働』ではなく『朗動』にしていくんだ、という強い信念のもと、今後も仕事をしていきたいです。

一瞬ならばブラック企業的なことをやっても売上げは上がります。ですが、間違いなくヒトは離れて売上は下降に転じていきます。

労働環境が整ってないと、今はダメな時代です。働き方改革とか、チャンとやらないとその会社は早かれ遅かれ淘汰されますよ。矢印の方向が間違ってはいけないです。いきなり変えることは難しいですが、ちょっとずつでも労働環境を改善していくことが大切で、これを社労士として支援していきます。

また、今は「SDGs」の視点も会社にとって大切な時代になりつつあります。
小中高の授業では、「SDGs」必修になり、「パパの会社ってSDGsは何やってるの?」って子供に聞かれるようなこともあるそうです。

このようにSDGs が脚光を浴びる中で、会社はSDGsを通じて何をするのか。また、何をできるのか。自社内でできないものについては、他社との連携も模索しながら社会全体でSDGsの取り組みを進めていくことが重要です。

このSDGsの取り組みには、社労士が関与できる項目が多いので、今後はここにも力を入れていきたいです。

─本日は貴重なお話、ありがとうございました!

事務所概要

事務所名 社労士事務所 Office Follow
所在地 〒107-0062 東京都港区南青山4-17-33 グランカーサ南青山2F
TEL:03-6434-0713
Office Followの特徴
  • 人・組織に関する経営者のお悩みを、助成金等を活用し、ローコスト(実質負担無料)にて解決策をご提案します。
  • 給与計算をベースに人件費の見直しを行い、貴社に利益を残し、会社経営の成長に貢献します。
  • 労働が「牢働」ではなく、「朗働」にするため、労働のさまざまな課題をフォローし、経営者、従業員の皆様が満足する環境づくりを目指していきます。
URL https://www.office-follow.jp

この記事を書いた人

平澤 一馬

平澤 一馬(ひらさわ かずま)

東京都世田谷区出身
保険業界6年目
20代前半に声優・舞台俳優をめざし養成所や小劇団に所属していた。
その時の経験を活かして「どうやったらわかりやすく伝わるのか」をモットーに営業しております。日々勉強。

写真を撮った人

伽賀隆吾

伽賀 隆吾(かが りゅうご)

北海道出身。現在は東京都在住。
車両撮影の照明会社に就職、同社のライトマンからキャリアをスタート。のち写真部と兼任で修行後フリー。職業カメラマンとして活動しながらギャラリーバーPaper Poolにて展示企画・運営・なんちゃってギャラリスト・炊事なども行っている。


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